<<釣行記>>
<<阿部さん>>
田中さんのお誘いで太刀魚釣りに出かけた。
いずみ丸は45人乗りで、近辺の遊漁船に比べ際立って大型で、設備は整っている。ただしキャビンは小さく7〜8人座れば満員になる感じである。その分釣座は広く、特に艫の釣座はゆったりしている。乗船者は6人3グループで皆この船にはなじみの様子であった。
今回は船主である本来の船頭は前夜飲みすぎたとのことで、通常はアシスタントをやっている甲斐さんが船頭を勤めることになったとのことである。この方は50歳がらみのひょうきんな一面を持ち合わせた陽気な人柄で、身が軽くて大変面倒見が良い人で、加えて乗船時に田中さんが巧みに紹介してくれたためか、ポイントポイントで餌付けから竿の上げ下ろしの方法まで丁寧に教えてくれた。またこちらの釣況をよく観察していて呉れていて、太刀魚を釣りあげるや否や飛んできて針はずしから獲物の締め入れ、テンヤへの餌付けまで総てやってくれた。仕掛けの針金が切れればすぐ交換してくれるし、餌(いわし)が切れるとすぐ追加を出してくれた。
おかげでこちらは釣にだけ集中すればよく、大名釣りの醍醐味を存分に味わうことが出来た。この船頭は、最近の食いの悪い時期にもかかわらず、乗船者全員が2桁の釣果を出させるように大変な気遣いをしている姿が垣間見え好感が持てた。
釣り場は2箇所。
1箇所目は波止場から10分ぐらいのところで水深が55m位から45m位までなだらかに変化している場所を流しながら釣る。
2箇所目は更に10分ぐらい沖合いに出て水深が72m位から55m位まで変化しているところを流しながら釣る。
1箇所目のところでは当初あたりが分らないで苦労したが、だんだん分かるようになり釣果が上がるようになったところで、フグに餌と針金を食いちぎられ苦労した。
船頭が言うには、「フグも太刀魚と同じようなあたりがある。微妙なあたりがあったらゆっくり巻き上げて追い食いをさせてみて、反応がなければフグなので巻き上げて餌を付け替えること。フグに
齧られた餌を太刀魚は食わない。」
終盤は微妙なあたりを捉えることが出来るようになったがどうしても引っ掛けることが出来ず、餌の消費が急激に増えた。
2箇所目のところではあたりの捕捉と引っ掛けが同期したが、サイズは比較的小さかった。棚はいずれの場所も底から10〜20mで稀に30mのところでもあたりがあった。
田中さんによると、太刀魚つりが最も魅力的で難しく奥が深いとのこと。今回のいずみ丸でその一端が理解できたような気がする。
今回の太刀魚つりでは餌の付け方と独特のあたりに対する認知力、あたりの種類に応じた合わせ方、棚のとり方の重要性を認識した。
餌は冷凍いわしを使ったが、船頭の教示によると、
@いわしは出来るだけ溶かさないで、硬い状態でテンヤに取り付けること、
Aいわしの姿はできるだけ崩さないで、銀色の輝きを保全すること、
B尻尾が重要であり、千切れたらすぐ交換すること、とのこと。
今回の釣では特に前半では、餌付けを総て船頭がやってくれたので、このあたりの勉強をさせてもらった。
太刀魚のあたりはさまざまな形があり一言では言い表せない。船頭は微妙なあたりほど大物で、はっきりわかるあたりは小物が多いとのこと。また「もぞもぞとした感じのあたりがあったときは駄目元で合わせてみろ」 「合わせるといっても大きくあわせるな、合わせた後、竿を下ろすな」 と忠告を呉れた。
最初はその意味が分らなかったが、4時間ぐらい釣っていてやっとその感覚が掴めたような気がした。何しろ太刀魚のあたりはきわめて微妙であり、さまざまな形がある。その状況によって合わせ方も工夫しなければならない。
棚取りは難しい。
周りの人の言葉に影響されてぶれると釣れなくなる。自分の信念に従って棚取りをすることも重要だ。
今回の習得した釣り方の一例は次の通りである。
1)餌は丁寧に付けて、特に尻尾は真っ直ぐ伸びるようにセットする。
2)投入すると餌を底棚まで出来るだけ早く持ってゆく。
このとき途中で糸がたわむようなことがあれば止めてゆっくり巻き上げ誘ってみる。
3)底棚では全神経を集中してあたりを1〜2分待つ。
4)あたりがあればゆっくり巻き上げて追い食いをさせる。
食い上げのときは早い巻上げが必要。
もぞもぞした感じがあれば大物が餌を齧っている可能性があるので誘いをかけてみる。
巻き下げは避けること。上へ上へと誘うこと。
5)太刀魚が乗っていると巻き上げている途中でガツンと大きなあたりがある。
それがなくても10m位は食いあげてくることがあるので、あきらめないで巻き上げ速度を変えながら巻き上げる。
途中、小さなあたりが続くようであれば大合わせをして引っ掛ける。
6)あたりがなければ0.50〜1mゆっくり引き上げて数十秒待つ。
あたりがなければ更に引き上げて数十秒待つ。
ここで重要なことは「錘の重さ」を感じること
今回は天秤を使って、テンヤと飲ませの両方を試してみたかったが、船頭の面倒見が良かったことと、なかなか2桁に届かなかったので、勝手なことをするには気が引けてチャンスを失した。
次回、やってみる事にしよう。
特に太刀魚が横からアタックするような場合はテンヤがうまく作動しないのではないかとの危惧があることと、太刀魚以外の魚(河豚など)がきた場合もこれを取り込むためにも是非やってみたい。
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